Everest Challenge

Yoichi Wakayama The Way Of The Summit

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Jam Session 若山陽一×竹内洋岳 だから僕らはサミットをめざす

Jam Session

Jam Session

日本人初となる8000m峰14座完全制覇という偉業を達成したプロ登山家・竹内洋岳氏。
その竹内氏に刺激を受け、登山を始めたばかりの若山陽一。
山の経験に天と地との差があるともいえる彼らが、2014年秋にエベレスト登頂をめざす。
エベレストには何が待っているのか。山とは何か。トレーニングで訪れた山の中で、男たちは語り合った。
(対談日:2013年8月)

きっかけは、竹内さんとの出会い

若山 登山の経験がなかった僕がエベレストを目指すと言うと、「なぜ突然エベレストなのか」と聞かれることが多いですね。それには、竹内さんとの出会いが大きく影響しています。

竹内 初めてお会いしたのは昨年でしたね。

若山 ええ。「UTチャレンジプロジェクト2012」(注1)の特別審査員をお願いしたことがきっかけですね。

竹内さんはそのころ「14 Project」ということで、日本人で初めて8000m峰14座完登をめざすというチャレンジをしている最中でした。竹内さんのことを雑誌で知り、「すごい人がいるなぁ」と驚きました。そして『初代 竹内洋岳に聞く』を読んで、山の世界は経営に通じるところが多いんだな、とますます興味が湧きました。

当社も日本一の請負会社を目指していましたから、ぜひ竹内さんに特別審査員を、ということでお願いしました。

注1「UTチャレンジプロジェクト2012」

UTグループの企業文化である「挑戦」という姿勢をさらに醸成していこうと、2012年にスタート。カルチャー、ネイチャー、スポーツという分野でチャレンジャーを公募し、359組の応募の中から選ばれた15組のチャレンジャーを応援した。
UTチャレンジプロジェクト2012スペシャルサイト

エベレスト挑戦のワケ

竹内さんからアックスをプレゼントされ、感激
(2012年2月)

若山  実は、2011年8月にUTグループの幹部研修で富士山に登っているんです。日本一を目指すんだから、みんなで日本一の富士山に登ろうと。
でもそれ以外は山に登ったことがなかったので、竹内さんにお会いする前にエベレストの本などを読んでみました。そして僕もいっぺん、そういうことを体験してみたい、という思いを抱くようになりました。

ただ、僕は登山が苦手なんです。持久力がないんですよ。これは先祖代々(笑)。

だから瞬発力系のスポーツばかりやってきました。持久力系のスポーツは苦手なんです。登山は、富士山に登ったあとは行ってなかった。

でも「UTチャレンジプロジェクト」をやったり、挑戦という企業文化を醸成したりするうちに、会社のトップである僕もチャレンジすべきだ、と考えるようになりました。そして自分自身のチャレンジってなんだろうな、ということを考えました。

できると分かっていることをやってもチャレンジにはならない。じゃあ、自分が一番苦手なことをやってみようと。それが登山だったんです。
目標をエベレストにしたのは、それが世界一の象徴だからです。

昨年、竹内さんにお会いしたときに、アックス(ピッケル)をプレゼントしてくださった。
僕が「エベレストに登れますかね」と聞いたら、竹内さんが「登れますよ。来年行きましょうか」(笑)。僕はあわてて「来年は・・・再来年に・・・」(笑)。
というのもありましたしね。

竹内 エベレストに登れるかどうかというのは、山登りをしている人にとっても分からない。だけど、エベレストに挑戦するというのは、誰にでも許されます。

昔はエベレストというのは、国を代表するような登山家や、登山家として相当な実績を持った人以外は、挑戦することすら許されなかった。それが、時代と道具や技術が変化し、誰もが挑戦できるようになりました。

今、挑戦できる者が挑戦したいと思ったら挑戦する。それが挑戦したくても許されなかった人たちに対しての礼儀だと思います。しないことのほうが失礼になります。
だから若山さんが挑戦をしたい、ということであれば、挑戦するべきです。

関わる人たち全員がチャレンジャー

竹内 どのスポーツでも、今までやったことのない人たちが「やりたい」と言ったら、先輩たちが教えるのが当たり前ですよね。

登山の世界で生きている私たちが、これからその世界に立ち入ろうとしている人たちに対して応援をするのは当たり前のことです。
だから若山さんが挑戦をしたい、ということであれば、私たちは最大のいい条件で挑戦してもらえるように全力で応援します。

例えば、その時点で考えられる最高のスタッフを集めて、それで挑戦してもらう。気象なら気象の専門、ガイドならガイドの専門の人、シェルパなら最高のシェルパを集める。一つ一つを中途半端にするのではなく、そこで考えうる最善のものを集めます。
リスクはゼロにはならないけれど、リスクに立ち向かっていけるだけの条件というものを整えていけると思います。

挑戦したときにはきっと、その都度いろいろな問題が起きると思うんです。若山さんには、そこで起きるいろいろな問題に挑戦をしていただきたい。それを一つ一つ挑戦して乗り越えたとき、頂上にたどり着くことになるでしょう。そしてちゃんと帰ってくる。

これは若山社長だけが挑戦するわけではなく、今回の登山に関わる人全員が挑戦をする。これがこの登山のすごく面白いところだし、私はそれに参加したい。これが、この登山の意味ですね。

若山 当社は「ガバナンス」が仕組みとして成り立っているので、僕が休んでも会社運営に影響がない状況が作れています。僕は会社のチャレンジ文化を体現することに専念し、会社はその間も組織立てて運営される。そういう意味では、他の役員や社員も一緒にチャレンジしていると思います。

プロセスを改善しながらゴールをめざす

若山 趣味ではスノーボードとかサーフィンとかをやっていますが、登山はまったく別のものだと思っています。登山はゴール設定してプロセスを組み立てていきますね。スノーボードとかサーフィンというのは、あまりそういうのはないですから。

登山と経営は、ちょっと似ているところがあるんです。経営の場合も、ゴール設定してプロセスを組み立てて、チームで役割を決めてやっていく。プロセス自体に問題があったら改善して、というのを繰り返す。で、結果としてゴールに近づいていく、ということの連続ですから。

だから登山は趣味というより、チャレンジの対象として考えています。予想していたより、やることが多いな、難しいな、と感じています。

今度、モンブランに行くんですが、モンブランで学んでくることは、普通の登山と違う点。まずクランポン(アイゼン)を付けるということと、フィックスされているロープを使って登る場面もある。それからアックス(ピッケル)も使う。要するに雪山登山に必要な装備を付けて登るということ。それと標高4810mという高所であるということ。そして休憩をほとんど取らずに長い時間を歩き続ける、ということ。

言ってみれば“仮想プチ・エベレスト”みたいなイメージを持っていまして。そういうことは体験したことがないので、実践的な練習にはいいと思っています。

ただ、「練習」と言ってますが、本当に登れるのかな、と(笑)。

竹内 モンブランに登れなかったからといってエベレストに登れません、ということではありません。登れればさらにそれを深めていけばいいでしょうし、登れなければもっといろいろ考えればいい。荷物を減らすのか、(重くて酸素を消費する)筋肉を落とすのか、ということを考えて対策を練っていけばいいことですから。

ただ、登ろうとする、動き続けようとする、という意思を保ち続けられるかどうかということは重要です。
たとえばエベレスト(標高8848m)だと、サウスコル(標高7900m)からプッシュを出すと、長時間歩き続けなければいけないと思うんですね。

モンブランの頂上にはそれなりの数の人が登頂しますが、エベレストは登頂者が多くなったとはいえ、いくら酸素を使ったとしても、登れない人のほうが圧倒的に多いわけですから。
やはり、そこに行くまでの過程が長いですからね。そう考えると、モンブランで動き続けることができるかどうかというのは、すごく重要になってきます。

1年後に思いを馳せ、今を楽しむ

若山 とにかく頑張ってみたいな、と思っています。エベレストにはちょうど1年後の8月に出発しますが、1年あれば、たいがいのことはやれる、と思うんですよね。1年という時間をどうやって使おうかな、ということを考えている今が楽しいですね。

1年後の結果はどうなっているかまったく想像がつかないんですけど、1年後の自分の状態がどうなっているのか、というのも楽しみですね。
この1年間を楽しんでいきたい、と思っています。

竹内 この挑戦が1年後にどういう結果を迎えているのか。その結果というのが、その後、どう発展をしていくのか。そこに思いをめぐらせるのも、本当に山登りの面白さですね。

実は山登りって、すごく大変なんですよ。当たり前ですが。頂上の手前なんてのは、おそらく、若山さんがエベレストに到達しようとするときには、まさに3歩あるいては「はぁー・・・」みたいな(笑)。とてもつらそうな状態になると思うんですね。

でも、なぜみんながこれだけワクワクしているかというと、思いをめぐらせることが楽しいから。
「どうしたらいいんだろう」とか「何を持っていこうか」とか。若山さんのことですからきっと「ジャケットを何色にしようか」とか、そんなことも考えて(笑)。

そういうことに思いをめぐらすことがすごく楽しい。だから今が一番面白いんです。それを楽しみながら、1年後、頂上に向かっていく自分を駆り立てていく。これは若山社長だけでなく、UTグループだけでもなく、私にとっても大きな挑戦です。

そしてこの登山に関わる人それぞれのチャレンジになる。一人でも多くの人に関わってもらい、一人でも多くの人が何かしらの挑戦をしてもらえるようにする。そういう人を増やしていくというのが、私自身のチャレンジになります。
それがこれから1年後をめざしての、私の思いです。

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